トリックスター アップデートの公開とともに、War Robots: Frontiersに第二のマップが加わった、その名も「Mont」だ。第一のマップ「Crash Site」は、驚異のスケール感と左右非対称的なマップ構成が純然たる「ロボット大戦」的ゲーム体験を提供してくれたが、「Mont」はまた異なる戦いをもたらすだろう構造となっている。
Montに潜む危険と、その構築の過程を、今回の開発スポットライトではお届けする。案内役は Baz(リードレベルデザイナー)とShredder-Blitz(コミュニティマネージャー)です。
レベル(ステージ)デザイン
「Crash Site」の仮組みバージョンがなんとかプレイできるような形になって来たあたりから、「Mont」の製作が始まりました。現在、同プロジェクトは記念すべきタスク #11000を完了したところです。ちなみに、「Mont」を最初に発表した時はタスク #1287 の頃でした。その頃のマップの状態を見たら、およそ今サーバーにあるのと同じモノだとは想像もつかないでしょうね。そう、まるで違うのです。
初期のコンセプトでは、あるひとつの要素がメインでした。あまりに大きく、登るのはかなり大変そうな山(Mountain)がマップの真ん中にドンとありました(だからマップの名前はMontなのです)。この山がエリアを半分に別ち、頂上には勝負を左右するビーコン1個、そこからの眺めはまさに絶景。
初期段階のブロックアウトの様子。今のと見比べてどうですか?
あまりに急な「絶壁」を見てプレイヤーはきっとこう考えると想定しました。山の斜面を登るのは避け、代わりに外縁にあるエレベーターをめぐって相手と戦うだろうと。あえて困難なルートを選ぶプレイヤーは山の斜面にある岩や崖、デコボコを敵の攻撃を避ける遮蔽物として利用しながら登山するだろうと。しかし最初のテストで、このコンセプトは粉々に砕け散りました。テスターの皆さんは遮蔽物など無視し、さらに側面にあるエレベーターを使おうともしませんでした。全員が、相手に先んじて頂上にあるビーコンを奪取しようと、てっぺんへまっすぐ向かったのです。そしてその過程で「ステージのデザインが悪い」などと不満を言っていました。なぜ、なのでしょうか?スクリーンショットのオレンジ色の斜面の上にある緑色のドット、あれは実はRavenロボットなのですが、スポーンエリアからはかなりの距離の「ハイキング」で正直面倒です。そして戦いの終盤では、高台を制した敵からバンバン攻撃されるという展開になってしまうでしょう。
Montの麓から山頂へと繋がるエレベーター(というよりも加速装置と呼ぶべきでしょうか)は勝利の鍵となるポイントとなるはずでした。頂上にあるビーコンを奪取するのに必要不可欠で、しかし遮蔽物が少ないエリア。このエレベーターに乗っている間は楽しいですが、乗った瞬間から敵の格好の的となります。遮蔽物として機能する大きなトンネルを追加するパターンも試しました。山の麓に隠れることができる場所を増やして、エレベーターにリーチしやすくするためです。しかし新しいテストプレイヤーたちもまた、前述のルートを選ぶのです。敵の弾が当たらないことを祈りながら、まっすぐ頂上を目指すのです。この時点で、大きな方向転換が必要なのは明らかでした。
大きな変更をした後の第1段階の時点で、すでにマップは垂直方向への高さをだいぶ失いました。山は最初の高さの半分ほどにまで削られ、その斜面からはもろもろが取り除かれてなだらかになり、そしてエレベーターのベルト部分が広くなり、エレベーターの稼働速度も速くなりました。さらにマップを素早く移動できるテレポートも導入してみました。
もはや「Mont」の面影なし…?
この時点でマップはなんとか、まともにプレイできる形になりました。レイアウト的に、闇雲に頂上を目指せば戦いが有利になるわけでもなくなり、エレベーターの利用が有効なオプションとなりました。そしてスロープを駆け上がるという行為も以前ほどは面倒…に感じなくなりました。しかし今度はどうにも全体的につまらなくなりました。マップの構造がどうも「カチっと」来ないのです。そこで何度かの(いや何十回もの)テストからの改善という作業を繰り返した後、たどり着きました。
ドリルの導入!
長いエレベーター(加速装置)やテレポート、トンネルまでもを消去しました。物事を上手く循環させるには、時に要素は少ないほど良かったりするのです。山はさらに高さが半分ほどに削られ(もはや丘?)、代わりに小さなエレベーターをいくつか、山へのアプローチに加えました。さらに川も追加。だって、人間は川が好きじゃないですか。そして水に入ると「ロボットの動きが遅くなる」というゲームシステムがすでに「Crash Site」用に完成していたので、こちらでも使用するのが理にかなっていると判断しました。
プレイテスターの皆さんへ、そして開発チームの皆へこのマップを「売り込む」ために、加えた大きな要素の1つがドリルです。中央にあるビーコンの上にある4本脚の構造体。これは、ビーコンのある場所をまさかの「キルゾーン」へと変貌させる切り札でした。敵の攻撃以上の脅威となりえるものとはいったい?ドリルを落とすための、ドリルを狙える「狙撃ポイント」を作った時、このマップはいずれライブサーバーに追加できる出来になると確信しました。
しかし大きな問題がまだ1つありました。マップの一方にいるプレイヤーは、もう一方で何が起きているかがまったく分からないのです。「状況を把握できている」感が薄れることで、何をするでもなくウロウロするプレイヤーが多く発生しました。この問題を解決するために、「山」を復活させることにしました。しかし今回は、プレイ不可なエリアとして。
川を走らせよう、人の手が入っていないどこかに
山の質量をマップの半分ほどにカットし、適度なスケールとシンプルな配置にしました。当初、この解決策を導入するのには、ちゅうちょしました。というのも出来上がった雰囲気が、「Crash Site」が持つ二面性的な性質に似通ってしまうという危惧があったからです。しかしテストを重ねた結果、2つのマップには同質性よりも違いの方が顕著に感じられることが分かりました。「Mont」は、地形的にはシンメトリーな雰囲気で、ドリルビーコンが勝利への鍵であることは明白です。これはマップを見れば誰にも分かることで、すぐにも激しい戦いが始まるのが期待できます。
地形ブロックを積んでみてはプレイテストを行い、ヒートマップを分析し、またブロックを積んで、さらにテスト…およそ9ヶ月を要しました。そして、ついにコンセプトチームにバトンを渡すことができました。
コンセプト
コンセプトチームはスタートからエンジン全開でした。マップをいったん分析/分解し、鉄塊などで埋め尽くし、あるいは一定のエリアを掃除したりしました。
あそこにロボットが1体あるのが見えますか?私も見えません
その結果、かなりのバリエーションのラインナップが揃いました。しかし未来的なアートスタイルをかなり強く打ち出したバージョンの選択で全員が一致、マップ製作の方向性が決まりました。他の全てより抜きん出て良かったのです。いや、本当に「全員一致」だったわけではありません。チームの何人かは、こうしたパイプ有りバージョンの方がカッコいいと言っていました。この全体が複雑に絡み合って繋がっている感じが心地よかったのでしょうね。
ワイルド10には「油」が存在するようだ
アート
やっと、アートチームが参戦するタイミングとなりました。マップのライティング(光の要素)を全て見直し、グレーボックスが立っていただけの箇所にあらかじめ造っておいた建物などを追加していきます。マップ全体を包むぼやけた暖かい光、そしてマップの「Mont」自体は埃っぽい火星のような雰囲気、映画「トータル・リコール」のような空気感。この時点ですでに「ワイルド10にありそうなロケーション」となっていました。
この「辺境」には農地はないようだ
さらに数ヶ月、アートチームは構造物や周辺環境の構築に勤しみました、マップが徐々に「ゲームプレイ可能」なものへと変貌していきます。ライティングを少し冷たい感じに寄せて、「Mont」の人工的なエリアが周辺の山々と対比するような仕上がりに変えました。全てのプレースホルダー(仮置きのアイテム)を完成版仕様のアセットに置き換え、さらに初期コンセプトの1つだった「酸のプール」をあらためて導入しました。新しい要素が加わるたびに、QAチームがテストを行い、(少なくとも早期アクセス段階において)最適なパフォーマンスと整合性が実現できていることを確認しました。
どこを狙うべきか一目瞭然!
もちろん、これはまだ「Mont」の最終形ではありません。ドリルにもう少し要素を追加することを考えていますし、このマップの環境のビジュアル的な要素もまた、今後変わっていくことでしょう。しかし現時点で、早期アクセスの開始から数ヶ月というタイミングで、新たなマップをお届けできたことを嬉しく思っています。
ぜひ公式Discord に参加して、「Mont」をプレイしてみた感想をお聞かせください!ドリルを利用してのキルを達成できましたか?中央のビーコンを取らずに勝利できたことがありましたか?
次回の開発スポットライトは、ゲームモードの話題です。War Robots: Frontiersに加わる新たな楽しみ方をご説明しますのでお楽しみに!